ヘルペス

【ヘルペスの原因】
 ヘルペスウイルス(HSV)による疾患で、主に口周りに小さな水疱が多数生じ、病変部位の違和感や疼痛を伴う疾患です。成人の50%以上にHSV感染があるとされています。初感染時に症状があることもあれば、症状がなく気付かない間にウイルスに感染する不顕性感染であることも多く、ヘルペスにかかったことがないと思っていてもヘルペスウイルスが体内にある(潜伏感染している)ことがあります。


【ヘルペスウイルスとは】
 ヘルペスウイルスは2種類あり、HSV-1は主に三叉神経の神経節に潜伏して再活性時に口腔周辺の病変をもたらすもので、HSV-2は主に仙骨神経の神経節に潜伏して再活性時に陰部病変をもたらします。

 ストレスや疲労、風邪などのウイルス感染、日焼けなどをきっかけとしてウイルスが再活性化して皮膚粘膜症状を生じさせます。発症時は病変部位にウイルスが存在しますので、密な接触などを行うと他人への感染リスクが生じます。家族内での感染を防ぐために、タオルを分けるなどの注意が必要です。HSV-2は性感染症でもあり(近年ではHSV-1による陰部ヘルペスも増えています)、その点での注意も必要です。


【ヘルペスの診断と治療】
 検査による診断も可能ですが、通常は臨床症状により診断されます。一般的には口周りの比較的軽度な症状であることが多く、抗ウイルス薬の外用により1週間程度で軽快します。口内炎を併発する場合や疼痛が強い場合などでは抗ウイルス薬の内服を行う必要があります。また、主にアトピー性皮膚炎の方で顔面のかなりの広範囲に小さな水疱が多発する場合も、カポジ水痘様発疹症とよばれる単純ヘルペス感染症であることがあります。


【ヘルペスの合併症】
 角膜病変を生じた場合には早急に眼科への受診が必要です。指に感染した場合はヘルペス性ひょうそになるなど、典型的な発症部位以外にも症状が出る場合があります。また、まれに単純ヘルペス感染症に引き続いて多形滲出性紅斑という皮膚疾患を生じたりすることがあります。また、妊娠経過中にヘルペスを発症した際には、かかりつけの産科への受診が奨められます。